中国の空母の名前はなぜ遼寧(りょうねい)なのか

このほど旧ソ連空母ワリャーグが、中国の練習空母「遼寧」として就役し、いよいよ本格的な空母部隊を作るための活動を開始します。
さて中国海軍にとって象徴的な意味を持つこの空母はなぜ遼寧という名前になったのでしょう。

中国にとっても、この空母は国家の象徴的な存在であるはずです*1。戦前の日本海軍ならきっと「扶桑」とか「大和」となずけたのではないでしょうか
*2

遼寧とは遼寧省のことです。中国語では「リャオニン」ですが、我々は日本読みの「りょうねい」で構わないでしょう。省は日本の都道府県に相当し、遼寧省中国東北部にあります。瀋陽市や大連市を抱え、経済発展著しい沿岸部に属します。

ここで疑問が生じます。確かに遼寧は近年発展した地域ですが、歴史的にみれば辺境で、中国の中心ではありません。たとえば北京とか上海に比べたら存在感は小さいものです。なぜなぜ遼寧省なのでしょうか?
実はこの遼寧省は我々日本と深い関係があるのです。遼寧省を含む東北三省はかつて満州とよばれていました。そう、かつて日本が満州事変によって、中国本土*3から切り離し、満州国を打ち立てたあの満州です。瀋陽市や大連市といった近代的な大都市が形成されたのも、日本の資本投下と治安の安定がもたらされたこの時期です。

こう考えると、中国海軍が初の空母を遼寧となずけた理由が理解できてくるのではないでしょうか?私には韓国海軍が象徴的な軍艦に「独島」と名づけた事*4と重なって見えます。満州はもともと外国であり、ロシアや日本に奪われた事がある土地だからこそ、象徴的な艦の名前にすることでになずけることで自国の一部であることを誇示したいのではないでしょうか?
そして周知のとおり、中国共産党および人民解放軍は、その正当性を抗日戦争に求めています。それを連想させる名前であればあるほど、中国人はナショナリズムをかきたてられるのではないでしょうか。

ここは中国人の人に「遼寧」と言う名前にどのような印象をもつのか、ぜひ聞いて見たいものです。

追記:私の考えすぎで、練習空母にすぎないので遼寧なのかもしれません。あとに控えている建造中の正規空母のこそ本命と考えられている可能性もあります。中国海軍は遼寧のニュースバリューをどれだけ理解しているのでしょうか?

追記:単純に軍港の大連があるからかもしれません。あの旅順の対岸に位置する良港です

http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50679181.html
http://obiekt.seesaa.net/article/294178557.html
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012092500441
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2012-09/25/content_26625830.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120925/chn12092519250019-n1.htm
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120925-OYT1T01054.htm

*1:現代の砲艦外交は空母機動部隊で行われますから、外交的にも重要です。中国は今までアメリカの機動部隊に煮え湯を飲まされる立場でした

*2:当時は戦艦が主力艦とみなされており国家の象徴でした。空母はまだ実力を証明できていない新兵器です

*3:ちなみに満州はで、かつての中華世界に含まれていなかった、という意味で中国本土(プロパーチャイナ)ではありません

*4:独島級を韓国海軍の中核を成す艦艇といえるでしょう。強襲揚陸艦と言ってしまう補助的な艦艇とのように聞こえてしまうかもしれません。しかし事実上のヘリ空母であり、将来は垂直離発着機の運用を臭わせています。そして艦隊の旗艦として運用するために、過剰におもえるほどの電子装備をもっています