なぜ自閉症で刑期が伸びるのかを、冷徹に考えてみる。

◆姉殺害に求刑超え懲役20年判決 発達障害で「社会秩序のため」
http://kumanichi.com/news/kyodo/main/201207/20120730015.shtml

おいらは発達障害が殺人の原因する見方が正しいならば、裁判官の判断は間違っていないと思う。しかしなんでも発達障害のせいする見方には賛成できないし、判例として後々の裁判に影響するのは困る。誤解や偏見を緩和するという意味でも、本件が、社会的に注目されるのはいいことだと思っている。

そもそも刑務所は更生施設なのだ。悪いことをした人が刑期を終えたらシャバに出てこれるのは、更生の見込みがあるからだ。少なくとも建前上は。逆に、更生の見込みが無い犯罪者というのは死刑か終身刑*1にするしかない。

一般に、障害や病気によって犯罪が引き起こされたとする主張は弁護側が減刑のために展開する主張である。

仮にこれが正しいとしよう。発達障害は一生治らない。本当に障害が原因で殺人がおきたと断定するなら一生隔離しておくしかない。こうなるのは論理的な帰結だ。

統合失調症など精神病患者*2の場合は、妄想によって殺人などの重罪を犯す人がいる。病気によって場合責任能力が回避される代わりに、かなりの長期間閉鎖病棟に隔離される。一生出てこれない人も多い。

発達障害は精神病でないので精神病院送りはできない。そして発達障害一生治らない。精神病のように悪化することが無い代わりに、治ることもない。ならばできるだけ長い間刑務所に入れて隔離しておくしか無い。この理屈自体は間違っていないと思う。


しかし、本当に発達障害が原因で犯罪が起きたといえるのだろうか?
たしかに社会の仕組みが理解ができないところまでは、障害のせいであり、補う養育を受けれなかったせいであろう*3しかし、逆恨みするのは他罰的な性格やプライドの高さが原因であろう。さらに、暴力や殺人という一線を超えてしまうのは、当人の攻撃性の問題である*4
発達障害者だから暴力や犯罪を犯すという見方は、偏見というやつである。少なくとも発達障害の当事者にとっては迷惑な見方である。

個人的には量刑判断における発達障害は「不遇な家庭環境」や「虐待」と同程度の扱いにしてほしい。不幸な家庭環境に育った人の多くの犯罪者になるわけではないように、発達障害者の多くは犯罪者でも反社会的な人格の持ち主でもない。むしろ、自閉を持ってる人は他人の操作能力が低く、ずる賢く立ちまわることができないので、ルールを墨守する傾向が強い*5。問題は一部の障害者が理解力不足からくる誤解や、社会からの孤立の結果、社会を敵視するに至ることである。



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http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG30043_Q2A730C1CC1000/
http://www.47news.jp/CN/201207/CN2012073001002297.html

*1:日本の場合は無期懲役が最高刑なので、あとは現場の判断で終身刑的に運用されている。

*2:発達障害と混同されがちだが、別物であることで留意されたい

*3:被告が育った時代では社会の理解もなく、適切な養育を受けることができなかった。

*4:精神医学でも暴力や反社会的な行動は発達障害とは切り離して、行為障害や人格障害としてとらえるのが多数意見である

*5:知的に障害がある場合は、社会ルールの理解が難しい場合もある

外人と呼ばれる事をひどく嫌がる人がいる理由

外国人にはガイジンと呼ばれるのを嫌がる人が一定数いる。日本語においては外人というのは外国人の略称にすぎず侮蔑的な意味合いがないにももかかわらずである。

これは何故なのだろう。もちろん外国人として、本国人と区別(差別)されることに疎外感を感じると言う気持ちはわかる*1。しかし、そのような区別はどこにでもあるのではないだろうか。*2

外人と呼ばれるが嫌で仕方ない人たちというのはどういう人達なのか。時として声高に批判し、言葉狩りの原因を作るのはどういう人たちなのだろう

実は日本人にも、同じような感覚がある。もちろん外国にいって外人あつかいされるのは普通のことなのでなんとも思わないだろう。しかし日本人には、イエローやアジアンなどと他の東洋人とひとくくりにされるのを嫌がる傾向がある。自分はマナーや金払いのよい日本人なので中国人や韓国人と一緒にしてくれるなという感情である。プライドの高い人ほどこの傾向が強く、優越感の裏返しと言っても良いだろう。日本でエリートコースを歩んできた人ほど、人種差別に憤慨する傾向があるともいう。

実は声高に外人と呼ばれてひどく嫌がるのは大方、白人男性なのだ。彼らは本国で差別された経験が無い。だから、日本に来て優遇されるどころか外人として区別(差別)されることにショックを受ける。しかも日本では白人だろうが先進国民であろうが、有色人種や途上国民と同じ外人というカテゴリーに放り込まれてしまう。当然、普段、人種的な偏見が強い人ほど嫌がる傾向が強い*3

 有色人種、特に黒人は白人がくやしがるのを見て、愉快そうにしている事が結構ある。「自分達の気持ちが少しはわかっただろう」というわけである。

追記:省略した常識的なことがらを念のため。第一印象で見た目や発音から外人と峻別されるのは、しかたのないことであって、ここで不快感を覚えるのはお門違いだ。そこからどれだけ相手のアイデンティティに関心を持てるかで、敬意を表せるんじゃないだろうか。相手がとりあえず日本人だと認識して欲しいと感じるように、相手がどんな国の人で、どのような言葉を話し、どのような信条や宗教を持っている人なのかを。そして忘れてはならない一番大切な事は、相手がある名前を持った一人の人間のあることだろう。

*1:懸命に日本に溶け込もうとしている人が、どこまで言っても日本人に受け入れられないと感じるなら、嫌味の一つも言いたくなるだろう

*2:アメリカのような移民国ですら移民一世や外国人は区別される。

*3:人間が差別が大好きな生き物。人種的に均一な日本人でさえ、血液型性格診断のような迷信に飛びついて人間のカテゴライズを始める。まったく業が深い